ウムヌゴビ

東は中国の内蒙古自治区から西はアルタイ山脈まで、東西2500kmにわたるゴビ砂漠。その総面積は約100万平方kmにもおよびます。この広大な大草原はモンゴル国どの30%を占め、ドルノゴビ、ドンドゴビ、ゴビアルタイの4県にまたがっています。なかでも南のウムヌゴビ県が砂漠の割合が最も大きく、古くから観光地として人々の間に親しまれてきました。
そもそも「ゴビ」とはモンゴル語で、疎らかな短い草が生えているという土地という意味があります。「ゴビ」という語感からサハラ砂漠のような荒涼とした草一本も生えていない砂漠をイメージしてしまいがちですが、実際ゴビには様々なタイプの土地があり、生物のすみにくい砂丘の広がる砂漠は国土面積のわずか2.5%にすぎません。しかもゴビは、山、森林、泉、砂地、大草原といった生態圏が広がり、珍しい動植物も多いのです。また、太古には恐竜が闊歩していたのでしょう、恐竜の化石も数多く発掘され、地質学的にも大変興味深い場所です。トルコ石、赤や緑や青のメノウ、推奨などの宝石を含む鉱石もたくさん見つかります。
最近では、ゴビ砂漠の活性化として、日本との合同開発のゴビ・プロジェクトが実施されています。このプロジェクトは遊牧民の伝統的生活や自然と共存した開発を目的としたもので、具体的には砂漠の緑化、太陽エネルギーの開発が行われています。また、モンゴル政府の中でウムヌゴビ県に国際空港を建設しようという動きもあります。
モンゴリアンブルーと呼ばれる青い空、幻想的な蜃気楼、手が届きそうなくらいの満天の星、どこまでも続く大草原。ゴビは、素晴らしい自然がいまなお残されている数少ない土地だといえます。
ウムヌゴビの歩き方

ゴビ地域4県の中で、現在最も簡単に旅行者が訪れることのできるところがウムヌゴビ県です。この県は社会主義時代、自由旅行がまだできなかった時代でも滞在可能でした。
ウランバートルから南へ約520km、飛行機で正味1時間半。飛行機は赤い旗が50m間隔に数本立っているだけの何もないステップの平原に着陸します。発着地の目前にあるのが観光用ツーリストキャンプです。
飛行機を降りると「ゴビ=砂漠」のイメージが間違った認識だということがすぐわかるでしょう。なるほどキャンプ地付近を歩いてみると5~30cmくらいの短い草が疎らに生え、小さな瓦礫がごろごろしています。草が密集し、土の盛り上がっているところを見るとナキウサギや鳥の巣になっていることが多いです
。遠方には「3つの美しい山」の意味を持つなだらかな山脈ゴルバン・サイハンの一部がかすんで見え、時間と方向によっては蜃気楼が見えることもあります。
この地方ではラクダの放牧が最も多く見られます。馬や牛、羊、ヤクの放牧も行われていますが、ラクダに乗って放牧していたりとゴビ特有の放牧も多いのです。集落になったゲルはほとんどなく、1家単位が何と数10km離れて点在しています。バイクを持っている家も多く、遠方でバイクが砂煙をあげて走っている光景によく出会います。自家発電の電灯を持つゲルもあります。彼らの食事はやはり馬よりラクダに依存することが多く、珍しいラクダの乳製品を口にできます。
ゴビ自然博物館
ヨーリン・アムへの道中、大草原もここで終わりなのかと錯覚するようなゲートがあり、瓦礫と岩山の多い地域にかかる。この分岐点に当たる間の所にゴビ自然博物館があります。
ここには数多くの鉱石や化石、野生動物の剥製、根が30mもあるゴビ特有の木・ザク、雪豹や狼の毛皮などがコーナーごとに展示されています。しかも、一部の化石と鉱石を除き、棚で囲ったところに置かれているだけです。触ろうと思えば触れますが、貴重な世界の遺産であるので触らないようにしたいところです。また、博物館の外には二つのゲルがあり、その中では生活用品が展示されています。モンゴルの民族衣装のデールも試着できます。
ヨリーンアム

ゴビ砂漠のゴルバン サイハン山にはヨリーンアムという美しい所があります。ヨリーンアムはモンゴル語で“鷲の谷”の意味を持っています。確かに谷の上空には鷲が飛んでいて、この地名にも納得させられます。
谷の標高は2200mと高く、初夏でもこのあたりは雪が残っています。さすがに真夏は溶けてはいますが雪のない谷間は涼しくて気持ちがいいです。気温30度の暑い夏の日、谷間を歩いて日陰に残る氷を見るのも面白いでしょう。ほとんど一年中氷が残っている珍しい場所です。
ヨリーンアムの一番狭い部分は、同時に二人以上が通ることができないほど左右の絶壁が接近しています。また、このあたりは野生の羊と山羊、オオカミ、ゴビ熊、はげたか、野生のロバなどが生息しています。
バヤンザグ

この世界でも有数の地下資源の産出地であり、恐竜の卵や化石が発見されたことで世界的に有名な所です。この辺りは1920年代、アメリカ人のアンドリュースによって初めて世界中に知られました。アンドリュースはここから恐竜の骨と卵の化石をいくつか発掘しましたが、それは現在アメリカのスミソニアン博物館に展示されています。また、この辺りは何百万年も前から人間が住んでいた証拠となる珍しい物がたくさん見つかっていることでも有名です。あなたも気をつけて探すと恐竜の化石の破片が見つかるかも知れません。
3ホンゴリーン エルス

ゴビ砂漠といえば、見たことがない人はサハラ砂漠のような荒涼とした草一本も生えていない砂漠をイメージしてしまいがちですが、実際モンゴルのゴビ砂漠には様々なタイプがあります。 モンゴルのゴビは国土面積の2、7%を占めますが、生き物が住めないような荒涼とした砂漠はその一部にしか過ぎません。モンゴルで一番大きな砂丘であるホンゴリーン エルスは、長さがズウルン山の裏にまで達し180キロです。幅はは3-15キロです。一番高い砂丘は300メーターにも達します。
砂丘の上に登ると、風が吹いていないのに砂が舞い上がっていることから砂漠が移動していることが分かります。砂丘の北部に沿って川と森林と泉、すべてが揃った美しい所があります。この川の周辺には芝と花をはじめ様々な植物が生えています。
カラコルム

モンゴル帝国の首都カラコルムのあったハンガイ地方は、滋味豊かで放牧に適するうえ気候も良いので、古来より遊牧民族の争奪の的でした。ハンガイはこの地方の固有名詞であるとともに、高原の肥沃な土地を指す一般名詞でもあります。夏ともなれば天然の花畑や、オルホン川の豊かな木が高原の美を一挙に提出し、見る人の心を奪うことでしょう。
カラコルムの歴史

マルコ・ポーロやルブルクなどヨーロッパからの旅行家が記しているように、カラコルムは世界の文物や民族が集まる、東西交渉を象徴する国際都市でした。カラコルムはモンゴル帝国第2代皇帝オゴデイが1235年に建設、壮麗な宮殿が軒を連ねたと伝えられますが、5代ホビライ(フビライ)がカンバリク(大都=現・北京)に遷都以来、急速に衰えてしまいました。加えて建築資材も後世この地に建てられた大仏教寺院エルデニ・ゾーに再利用されたため、町の正確な位置すらも長らく不明でした。しかしながら、文献学者らの碑文や歴史書の研究を経て、ソ連のキセリョフの発掘団は1948~49年、エルデニ・ゾーの外壁北側に接する地点に、万安宮すなわちオゴデイの宮殿跡を発掘し、その位置を明らかにしたのです。
エルデニ・ゾーの歴史

発掘されるまで多くが不明だったカラコルムに比べ、エルデニ・ゾーは今日にその雄姿を伝えています。1582年仏教保護で名高いアルタン・ハーンが死去すると、モンゴル各地に群雄割拠しはじめていた諸ハーンはおのおのの勢力拡大に乗り出しました。今日のモンゴル国の大多数を占めてるハルハ族の初の族長アバタイ・ハーンも、この前後より力を増していきました。彼はやがて青海においてダライ・ラマ3世に拝謁し、1586年エルデニ・ゾーを建立、翌年本堂落慶式を挙行するに至ります。ハーンはチベット仏教サキャ派のラマの指導のもと、この寺を造ったとされ、落慶法要の導師も懇請したダライ・ラマは巡錫せず、サキャ派のラマが行いました。このことは、16世紀末にはまだサキャ派の勢力が強力であったことを示しています。しかし、この寺はそもそもゲルク派のために建立されたものであり、サキャ派がこれを主管し続けることはできませんでした。ことに、ダライ・ラマ4世がモンゴル人であるアルタン・ハーンの孫に転生すると、モンゴル人はことごとくゲルク派に帰依するようになったといわれています。
バヤンゴビ
バヤンゴビはモンゴル山脈、森林、泉、砂地,大草原の複合体であり珍しい動植物も多く生息しています。景色のよい所である国立公園のバトハーン山もここにあります。バヤンゴビで狼、鹿、狐などの動物、ゴビ地域の代表的なトカゲや昆虫も多く見られます。
フシュー・ツァイダム碑
モンゴル国最長の河川であるオルホン川(全長1124km)の広い谷あいには 8-10世紀頃、突厥、ウイグルなどの緒族が相次いで国家を建設しました。その遺物としてカラコルムとフシュー・ツァイダムの付近には貴重な史跡がたくさんあります。
タイハル岩

ツェツェルレグ市からタリヤト郡に向かって20kmほど行ったタミル川のほとりにある高さ16mほどの巨岩はタイハル岩と呼ばれています。
岩には世界各国の文字が書かれています。もともとは仏教関係の言葉がチベット語で書かれていただけのものでしたが、いつの間にか観光客の記念碑に変わってしまったようです。
タイハル岩の近くには草原が広がり、羊やヤクの郡が草を食んでいるのが見られるのんびりした土地です。また、岩の隣にはツーリストキャンプがあります。
ツェンケル・ジグール温泉。
ツエツエルレグから東南約30km、車で40分ほど行ったところにある、露天風呂付きのツーリストキャンプ地。オゴタイハーンの隠し湯とされる温泉で、お湯の温度は86.5度。ゲルなどの宿泊施設のほか、モンゴルの家庭料理なども楽しめます。乗馬、魚釣り、民族芸能のコンサートなどは要予約。なだらかな丘をなす草原でポツンと入る温泉は、なかなかオツなもの。バックパックツアーの疲れを癒せる場所です。
ホスタイ山脈

“ホスタイ・ノロー“国定公園はウラーンバートルの西100kmのところにある。この地には世界的に珍しい野生馬が生息していたが、絶滅寸前まで数が減少したため、1993年に同種の野生馬がベルギーなどから再度輸入され、繁殖計画が始まりました。現在、当公園には、150頭にまで増えたその「タヒ」と呼ばれる野生馬をはじめ、様々な動物がいる。野生馬の群れを近くから見たり写真撮影も可能です。付近には砂丘もあります。
フブスグル湖

西部のオブス湖に次いでモンゴル第2の湖で、ウラーンバートルから西北約800キロのところにあります。面積2760平方キロ、周囲136キロ、深度267メータはモンゴルで一番深いです。モンゴルの青真珠ともいわれています。透明度は高く、流れ出ているエグ川はセレンゲ河となり、バイカル湖に注いでいます。フブスグル湖の70%以上は100メーターの深さであり、モンゴル国の一番大きな貯水池で地球の貯水量の2%を占めています。
何十メートルもの深さを泳いでいる魚が見れるほど水のきれいな淡水湖であり、冬、1月から4月までは湖面が凍結します。
針葉樹林に囲まれ、モンゴルのスイスと言われるほど景観が美しく、高山植物が多くあり、真夏でも涼しくモンゴルの北部の山地にあります。
フブスグル県に生活している4つの民族の一つであるダルハド族のシャーマンの伝統で有名です。
フブスグルの歩き方

最寄の町はハトガルですが、空港のあるムルンからハトガルまでジープで約4時間、湖まではさらに1時間かかります。それだけに湖畔は人の気配がなく、静寂な空気に包まれています。宿泊施設はいずれも湖の西に位置しているので、湖からの日の出も楽しめます。夜には湖の音が聞こえ、草原のモンゴルとは違った一面が見られることでしょう。
湖では釣り、北西の森林では許可制ですが鹿、熊などの狩猟ができます。また、馬だけではなく、ヤクやヤクと馬の混血ハイナクのライディングが楽しめます。
トナカイを飼う人々

フブスグル県にしか居住してない「ツァータン」と呼ばれるトナカイを飼う民族もここに住んでいます。ツァータンとは、彼らの言葉で、「トナカイを持つ人々」という意味。ツァータン族は言葉や生活習慣等の面でモンゴル国の主要構成民族であるハルハ族とは大きく違います。彼らの生活は、本来狩猟が主でしたが、20世紀半ば頃 からトナカイ飼育に依存するようになり、現在ではトナカイ遊牧生活が中心となっています。「ウルツ」と呼ばれる住居は移動式ですが、モンゴル式のゲルとは根本的に異なり、3~4.5メートルの枯れたカラマツを、大型のもので32本、中型で22~25本使って骨組が作られ、スカンジナビアからシベリア、さらにはアメリカ大陸に広がっている円錐形移動式住居・ティピーに酷似しています。
現在、30数家族、500人ほどのツアータンが500頭ぐらいのトナカイを飼っています。彼らの住むサヤン山脈は、現在も野生のトナカイが多く生息する地域です。数少ない現金収入は、年に一度、漢方薬の原料としなるトナカイの角を切り落とし、ときおり村に来る商人に売るくらいです。
ダダル・チンギスハーンの故郷
ダダルはモンゴルとロシアの国境にある(ヘンティー県)辺境の寒村ですが、この付近でチンギスハーンが誕生、埋葬されたと伝わるため、近年内外でにわかに注目されるようになっています。
チンギスハーンの誕生地と埋葬地については諸説があり、未だ決定を見ていません。“元朝秘史”に、テムージン(チンギスハーンの子供頃 の名前)はデリウンボルダグに生まれたとあるのですが、それが実際どこだったのかが学者の争点となっています。
チンギスハーンの生地ダダルは、1991年より観光客受け入れの準備が整い、外国人にも開放されました。ウラーンバートルから約600キロ、ヘリコプターで3時間ほどかかります。
チンギスハーン誕生記念碑
記念碑は高さ10メートルで、表にチンギスハーンと「スルドゥ」と呼ばれる軍旗の絵が刻まれています。
チンギスハーン由縁の地
デリウン・ボルダグに積まれたオボーの銘文は古い書体を模したウイグル式モンゴル文字で、「デリウン・ボルダグ。チンギスハーンは、水の馬の年(1162)の最初の月の16日にここでお生まれになった」と書かれています。その近くには、ハジョー・ボラグと言う水流があって、これこそテムジンが産湯をつかったところだなどと解説されています。
グン・ガロート
グン・ガロート自然資源地域は自然を大切に思っている方、遊牧民の特色ある文化と習慣に興味を持たれている方、面白いことが大好きな方に向いています。
グン・ガロートは一万 5 千ヘクタールの面積を持ち、ウラーンバートル市から 130 km離れています。 ここには2005年現在80 匹の野生の羊が生息しています。また、オオカミ、モルモット、ウサギ、きつね、かもしかなども数多く生息しています。 |